日本オラクル株式会社
代表取締役会長
米国オラクル・コーポレーション 上級副社長(SVP)
イー・エイジェント株式会社
代表取締役社長


 上場企業を率いている上での仕事のプライオリティを教えてください。
私たちはステイクホルダー(利害関係者)の立場にたって、バランスの取れたオペレーションを行い、長期に継続して事業規模を拡大していくことが大事だと考えています。このステイクホルダーとは、日本オラクルの社員1500名、6万名の株主、300社のパートナー企業、そして4万名を越えるオラクル・コーポレーションの社員すべてを指しています。経営スタイルとしてのもう一つの特長は、日本オラクルの経営がオープンであることです。会社の成長性と健全性、この二つをしっかりと舵取りしながら経営していくことを心がけています。


 日本オラクルはアメリカが本社ですが、本社との関係、位置付けをどうお考えですか。
オラクル・コーポレーションから見ると、主力製品であるデータベース管理ソフトにおいて、日本は世界で2番目に高い貢献度を維持しています。また、日本オラクルは日本市場におけるビジネス戦略や製品の拡販などが一任されており、独自のパートナー戦略の展開が大きな特長のひとつとなっています。もちろんITシステムや人材など、オラクル・コーポレーション本社、世界の各拠点や関連会社に至るまで、グローバルに資源を有効活用することは私たちの大きなメリットでもありますから、今後のさらなる成長のためにも常にこれらと連携していくことを心掛けています。

 日本市場についてはどうお感じになりますか。
日本企業が求める品質への要望は大変高いと思います。遠くない将来に市場全体が低迷期を脱出して再生するに伴い、日本企業にとってITはますます経営との密接な関わり合いをもってきます。こうしたとき、日本企業が中国を中心とするグローバル転換を推進していくことが重要であると考えています。


 本社とは常にコミュニケーションを取られているようですが
 難しさはありませんか?
本社と日本側の方針が違う時がポイントです。まずは本社の方針がどのような背景で決定されたかを確認し理解することです。その上で、日本の方針をしっかりと伝えることです。時にはアメリカの方針が日本に合わないこともあります。その際、どのように提案し結論付けるかなどは重要で難しい課題ですが、これをきちんと行えば日本のオペレーションもうまくいきます。その他の細かな経営に関してはすべて日本で判断して決定しております。もちろん、新製品の売り方など本社の方針を重視することもたくさんあります。

 新宅さんの前職は日本IBMですがそこでの経験は生かされていますか?
当時の日本IBMはもともと大企業でしたので安心感はありました。売上、製品力、ブランド力、経営基盤全てがすでに安定していました。企業内の仕組み、特に強みである、人事制度、教育制度などが充実しておりほとんどの社員が信頼して他の世界を考えず仕事をしておりました。社員は世界のトップブランドに従事していることの意識が高いですね。どんなことにも物怖じしないようトレーニングを受けます。たとえ駆け出しでも企業のトップに会うことをいとわないようになります。売るだけでなく、付随する情報提供の重要さ、アプローチの仕方など顧客の立場に立ったセールスを学べたことは大きいです。当時まさしく業界のトップ企業で経験した13年間は今の私に生きています。その彼らと今同じことをしようとは思いませんが、様々な判断をするときにこれまでの経験が役に立っているといえます。このようなことが今、自分の自信と信頼につながり現在の日本オラクルを作り上げていくことができていると思います。


 そのようなビッグカンパニーからオラクルのスタートアップに入って感じた事はどんな事ですか?
当時は小さな会社でしたから、とにかく会社にあるはずの仕組みが何もなかった。(笑)会社全体がいつもすべて見渡せたことが印象深いですね。そのおかげか、様々な経験をできたことがプラスになりました。完成された大企業でこれはなかなか得ることができません。規模の小さな会社の利点は、人事、経理まですべてが見通せて、透明なことです。IBMでは部分的にしかわからなかったことでも、オラクルで全体がよくわかるようになりました。会社の成長とともに経験できたことの数々は今も大いに役立っています。


 外資系企業についてどう思われますか?
外資系と言う言葉は死語だと思います。企業はグローバルに展開するか、ドメスティックに根をはるかの違いでしかないと思います。グローバルな競争下では、日本企業にもグローバルな人材の採用基準が必要とされていると思います。


 外資系という言葉は死語、なかなかするどいご指摘ですね。どうしてそうお考えになられますか?
繰り返しますが、今の世の中にはグローバル企業かドメスティック企業の違いしかないと思います。ほとんどの大手企業が世界に市場を求めなければ生き残れない時代が来ました。大手企業はグローバル化し、世界で勝たなければならないという必然の変化が訪れたのだと思います。そして変化できない企業は遠からず淘汰されるでしょう。


 では日本企業(ドメスティック)の強みは何でしょうか?
他のグローバル企業に比べると、日本企業は長期雇用制度があったためにロイヤリティの高い社員が多かったと言えます。現在でも、ロイヤリティの高い社員を強みに活かすことができれば、それ自体が日本企業の強みであるといえるでしょう。


 日本オラクルで働く社員のロイヤリティについてについてお聞きします。
社員にはまず、自分自身へのロイヤリティを求めます。それから、チームへのロイヤリティを問いかけます。最後に会社に対するロイヤリティの重要性を説いています。これらの三つのロイヤリティが同時にあることが必要だと思います。オラクルの社員の離職率は6%くらいですが、数字そのものは重要ではなく、社員と会社にとって適切であれば良いと考えています。オラクルでは若手社員の抜擢、待遇などのバランスが良いのが自慢です。これは社内での情報の透明性や意思決定の明確な理由など、常に何事にも透明性を重んじた結果だと思います。

 新宅さんご自身のオープン性はいかがですか?
とても高いですね。思ったことはすぐに顔に出すようにしています。もちろん自分の意志、考えをオープンにして周りにも理解してもらいます。そして組織の置かれている状況を正確に見て部下にどう任せるかという考えもできるだけ伝えるようにしています。


 新宅さんは2000年に社長になられましたが
 いつ頃から社長になる事を考えられましたか?
「何が何でも社長になるんだ」という特別な意識をそれまでしていたわけではありません。
しかし、長い間を経営者の近くで仕事をしてため、常に自分がその立場だったらどうするかなどと、自分なりのシミュレーションをするのが習慣になりました。自分自身が社長になるまでに、私自身の準備は自然に整っていたのだと思います。


 新宅さんの人生において意識している事は何でしょうか?
何事も前向きに考え、いつも気持ちのわだかまりを持たないタイプです。不平不満があるような場合は直接本人にいうことを心がけています。


 プライベートな事に入っていきますが趣味は何ですか?
自分の心をリラックスさせてくれることのすべてです。例えばプライベートでゴルフをしたり、映画を見たり、家族と過ごしたり、マッサージを受けるときなどです。


 好きな食べ物は?
基本は和食が好きです。とはいっても、何と決めつけている物はなく、おいしい物、おいしい店には常に興味を持っています。情報収集は欠かしません。特にと言えば魚と麺類が好きですね。


 常連のお店などはありますか?
気分転換が目的のことが多いので、気に入ったお店は何軒もありますが、常連と言うようなお店の利用はしません。


 家族については?
とても大事にされていると感じています。また、大切にするよう心がけています。私の家族は一人一人が自立しているので自分のやりたいことをやりたいように自分でしていますが、時々サポートをどうしたらいいかなどと考えながらバランスよく付き合っています。


 座右の銘は?
先手必勝(ビジネスは)


 転職についてどうお考えですか?
転職の動機には、今の職場から出たくなる場合と、あるところに行きたくなる場合があります。どちらの場合でも、まず自分を活かせる場を求めたほうがいいと思います。多少しんどくても自分を活かせる職場であれば、それぞれにチャンスを感じたり、専門性を身に付けるなどをして、その人なりの将来を築くことができると思うからです。


 最後に新宅さんが転職した時のエピソードについて教えてください。
IBM時代に縁のあった当時の日本オラクル佐野社長から来て欲しいというオファーがありました。上司には、話の内容と、自分の問題なので自分で考えていつまでに結論を出すか、と言うことを伝えました。もちろん社内外からは大反対されましたよ。現在ソフトウェア企業大手でご活躍のある人には、「これからはソフトウェアの時代なんかじゃない。ハードだ。」といって強く引き止められたりしました。


 どうしてはっきり決めていない事なのに上司に話をしたのですか?
もちろんお世話になってきた人ですし、オープンにすることが自分のあるべき姿だと思っていたからです。


 最終的にはどうしましたか?
色々と考えた結果転職を決めました。上司には、最終的には自分の意志で転職を決め、新天地で新たな人生を作っていくことを伝えました。決めてから先に迷いはなかったですね。お世話になった方々への挨拶を考え、ちょうど最終出社日となった11月の月末に皆に社内便で挨拶状を送り、その翌日、12月1日からは日本オラクルで働き始めてました。新宅社長の話を伺うと、ビジネス、プライベート含め本当にポジティブな人だという印象が深いです。ここまで来るには、嫌な事、意に反してもやらなくてはいけない事、色々な経験をされてきたと思いますが、常にプラス思考の積み上げ人生といった感があります。小事にはこだわらないで、周囲に振り回される事無く自分の信念を貫く強さも兼ね備えています。これが上場会社の社長として成功を収めているリーダーの人生のスタイルです。

本日は、長時間インタビューありがとうございました。今後の私どものサービス向上に、参考にさせていただきます。